漢方とは

漢方ってなぁに?

Q:そもそも漢方ってどんなものですか?

A:「体がだるい」など原因がはっきりしない不調を治すのが得意です。
西洋医学は検査などで明らかに病気と診断がついたものを治すのが得意。
これに対して漢方は「なんとなく調子が悪い」「体がだるい」といったはっきりしない症状を治すのが得意。
例えば「お腹の調子が悪い」「食が細い」「なんとなく元気がない」などです。
一方、アレルギーの病気や風邪やインフルエンザなど、急性の病気にも漢方は効果的です。
なお、西洋医学では同じ病名なら同じ薬や治療が行われますが、漢方では一人ひとりの「体質」(証・ショウ・といいます)や「症状」を診断して薬を決めます。ですから同じ不調でも患者さまによって 使う薬が違うことがあります。

Q:お子さまになぜ漢方がいいのですか?

A:☆ お子さまにこそ、漢方治療をお勧めいたします。

・ 現代っ子は、保護者の方が子どもの頃の生活環境とは全く違います。お子さまの症状が様々で複雑なものが多く、かつ、治りにくいものが増えてきました。

・ 漢方薬には、一つのお薬の中に複数の生薬成分が入っていますので、一つの漢方薬で複数の症状に効いてくれます。

・ 漢方薬は、病名ではなく症状に合わせて処方されます。

・ 漢方薬が最も得意とするのは、治りにくい症状です。

・ 漢方薬は、一つの病気の症状から、その症状に合った漢方薬を選べるという利便性があり、お子さまお一人おひとりに対して、いわばオーダーメイド治療に近いことが可能です。

☆ 他のお薬と一緒でも大丈夫です。

最近はアレルギーの病気など、西洋薬だけではなかなかよくならない病気が増えています。
このような場合、普段のお薬に漢方薬を加えてあげると症状がよくなることがあります。
これもまた、お子さまに漢方が向く大きな理由です。

☆ ストレスには心と体の両面から

さらにお子さまは心、体ともに成長期にあり、周囲の刺激を受け止め、大人以上にさまざまなストレスにさらされています。
その結果、気づかないうちに心が疲れ、それが体の不調となってあらわれることがしばしばあります。
例えば、赤ちゃんの夜泣き、学童期のお子さまの腹痛、胸の違和感、胃の不快感などです。
このような場合、心と体の両面から不調を治す漢方薬がとても役立ちます。
また、ストレスが原因で腹痛が起こる場合、漢方薬を飲むとお腹の調子がよくなるのと同時に、元気も出てきて食欲も旺盛になります。
更に漢方薬を続けていくと体質が改善され、お子さまは次第にたくましくなっていくはずです。

☆ 体質や症状に合うと、短期間で効きます。

さらに、漢方薬の良さには、体質や症状に合うお薬であれば、西洋薬と同じように短い期間で効果が得られることなど、たくさんのメリットがあります。
こうした漢方治療の魅力がお医者さまの間でも広く知られるようになり、最近では多くの小児科医が漢方を治療に取り入れるようになってきています。

☆ 服用のしかた

漢方薬の服用量は、症状やお医者さまの判断によって決められます。
お子さまの症状によっては、飲む量を通常より多くした方がよい場合があります。
当薬局では、お子さまの体重に応じた量を測りとって、1回分ずつ分包してお渡ししています。
漢方薬を飲む時間は一般的には食前ですが、飲み忘れた場合は食後でも構いません。
また、エキス剤は水で普通のお薬のように飲んでいただいても大丈夫です。
飲みにくい場合は、アイスクリームやジャム、チョコレートクリームなど、お子さまが美味しく服用できるものに混ぜて飲ませてあげてください。
粉が苦手な大きなお子さまは、漢方薬をオブラートに包んで飲んでいただくと、飲みやすくなります。

☆ 効果と副作用

漢方薬は「効果が出るまで時間がかかる」というイメージがありますが、体質や症状にぴったり合えば、おおむね1週間以内で効果があらわれます。
1週間たっても症状がよくならない場合、別の薬に変えたり、薬を追加したりしてさらに様子をみていきます。
アレルギーなど慢性の病気や心の病気の場合は、何カ月か飲み続けることをお勧めします。
体質も改善されるので、再発しにくくなります。その日のうちに効果が得られる漢方薬もあります。
例えば、風邪で高熱が出て寒気がある場合、漢方薬で汗がたくさん出るようになり、数時間で熱が下がってきます。
なお、漢方薬は副作用がないということではありませんので、お医者さまの指示通りに飲まれてください。

皮膚の病気からお腹・鼻・のど、さらには心の病気まで、お子さまが訴える不調に漢方薬が効果を発揮するものはたくさんあります。

皮膚の病気

お子さまに多い皮膚の症状には、赤みのある湿疹や、かさかさした湿疹、大きなブヨブヨとした湿疹、かゆみや痛み、膿や熱感をともなうものなどがあります。小さなお子さまに一番多いのは、アトピー性皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎や多形滲出性紅班には、ステロイド外用薬を使うのが基本です。
アトピー性皮膚炎で「なかなかよくならない」というお子さまをみますと、ステロイド外用薬の量が足りないことが多いようです。この場合、十分な量を塗ることで、症状はかなりよくなります。
薬を塗っても良くならない場合は、漢方薬を合わせて使ってみましょう。

・ アトピー性皮膚炎に効果のある漢方薬はたくさんあり、症状や体質によって合う薬を選ぶことができます。

・ じんましんにはかゆみ止めのお薬(抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン拮抗薬)を使いますが、よくならない場合は漢方薬を一緒に使うこともあります。

・ 面疔(メンチョウ)や蜂窩織炎(ホウカシキエン)の場合も、よくならない時は、抗生剤に加えて漢方薬を使うと、治りが早くなります。

お腹の病気

お腹の症状でよく見られるのは、便秘や下痢、消化不良(便が消化されずに出てくる)、腹痛などです。
慢性下痢は、心理的ストレスが関与していることも少なくありません。下痢と便秘を繰り返す場合は、過敏性腸症候群(IBS)という病気の可能性があり、ストレスで悪化することが知られています。

・ お腹が痛くなるような便秘には、漢方薬にも下剤としてよく使われているお薬がいくつかあります。

・ 急性下痢の場合、軽いものでしたら整腸剤だけでよくなることもあります。

・ 血便などが見られる場合は、細菌や毒素などが感染源となっている可能性がありますので、抗生剤と漢方薬を一緒に使うとすみやかに回復します。

・ 慢性下痢には漢方薬がとてもよく効きます。特にストレスで下痢が悪化している場合は、漢方薬でお腹の調子がよくなると同時に、気持ちも落ち着いてきます。

・ 過敏性腸症候群には、漢方薬がよく使われていて、その効果が確認されています。

鼻の病気

鼻の症状で一番つらいもののひとつが鼻づまりでしょう。
鼻づまりがあると口を開けている時間が長いため、のどの痛みも起こりやすくなります。
また、いびきの引き金にもなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす危険もあるので注意が必要です。

・ アレルギー性鼻炎の場合は、ロイコトリエン拮抗薬や抗ヒスタミン薬などの西洋薬がよく効きます。
こうしたお薬で良くならない場合は、ステロイドの点鼻薬、さらに漢方薬をあわせると治りが早いのです。
漢方薬はお子さまの体質を改善しますので、飲み続けているうちに、アレルギーの症状も次第に落ち着いてくることが多いのです。

・ 副鼻腔炎の場合は、炎症を抑えるために抗生剤を使う治療が基本になります。
また、アレルギー性鼻炎が合わさっていることも多いので、こちらのお薬をあわせることもあります。
こうしたお薬に加えて副鼻腔炎の症状に効く漢方薬を飲んでもらうと治りが早いのです。

・ 鼻づまりが続くと集中力がなくなり、学習意欲などにも影響があらわれますので、ぜひ早めに改善してあげてください。

のどと口の病気

のどの症状で多いものは扁桃腺の痛みで、口の中の症状で多いものは口内炎による痛みです。
夏風邪のウィルスが原因で、手足や口の中に発疹ができる「手足口病」も似ている病状です。
小学生以上のお子さまに比較的多くみられる症状に「のどのつまりや違和感」があります。
女の子に多く、背景にはストレスなど心の問題がからんでいることが多いようです。

・ 扁桃腺炎には繁殖している細菌を抑える抗生剤がよく効きます。こうしたお薬に加えて、痛みを取り除いたり、膿を排出したりする働きのある漢方薬を加えると、のどの症状がぐんと楽になります。

・ 口内炎や手足口病のお子さまには、痛みや熱を取り除く漢方薬が効果的です。

・ のどのつまりや違和感には、心を落ち着ける働きのある漢方薬がいいでしょう。症状がおさまるとお子さま自身が楽になるので、漢方薬を積極的に飲んでくれるようになります。

胸の病気

夜、せきが止まらない、せきで眠れない、笑ったときにせきが出る、階段をのぼったときにせきが出る...こうした症状の背景には、気管支喘息があることが多いのです。
小学生のお子さまでは、胸の痛みや不快感を訴えることがあります。検査を受けても異常が見られない場合、ストレスなど心の問題が関わっています。

・ 気管支喘息が重くなると発作で気道がふさがれるため、まれに命を失う危険があります。
お医者さまの指示に従って、軽いうちにしっかり治療をすることが大切です。

・ 西洋薬の治療は、かつての発作を抑える治療から、発作を予防する治療に変わってきています。
具体的には吸入ステロイドというお薬を発作がないときも使い、気管支の炎症を常に抑えます。
漢方薬にもせきの症状によく効くものがあり、軽い気管支喘息は漢方治療だけでうまくいくことがあります。
また、西洋薬でよくならない気管支喘息も漢方薬を併用すると、すみやかに症状が落ち着くことが多いのです。

・ メンタルが関連する胸の痛みや不快感には、心を落ち着かせる漢方薬がよいでしょう。薬が効いてくると気分とともに胸の症状も落ち着き、お子さまは不安から解消されます。

小児の風邪

風邪はウィルスがのどや鼻の粘膜に感染して熱が出たり、咳、鼻水、鼻づまり、声がれ、のどの痛み、頭痛などの症状があらわれたりするものです。
ウィルスの種類によっては、下痢や嘔吐などお腹にくる風邪もあります。
小さなお子さまは病原菌に対する抵抗力が弱いので、風邪を引きやすくなります。
ひどくならないうちに治してあげたいですね。
冬になると流行するインフルエンザはインフルエンザウィルスによって起こる感染症、普通の風邪よりも短い期間で発症し、症状が重いことが特徴です。

・ 風邪は症状をやわらげるお薬を飲み、安静に過ごすことが一番です。
37.5度以上の熱で寒気もあるときは、安静にして体を温めるとともに、解熱鎮痛剤や漢方薬を使って熱を下げてあげると楽になります。

・ インフルエンザの場合も、抗ウィルス薬と漢方薬を合わせて使うと治りがはやくなることがわかっています。

・ 咳と鼻の症状が両方ある場合は、先に鼻の症状を抑えてあげます。これにより咳が減ってお子さまが楽になります。

・ 風邪をこじらせ気管支炎になってしまった場合は、漢方薬に加えて細菌を殺す作用のある抗生剤を合わせると早く治ります。

・ 下痢や吐き気など、お腹の風邪にもよい漢方薬があり、整腸剤と一緒に使うことがあります。

心の病気

赤ちゃんに多い症状は、夜泣きです。

小学校低学年くらいまでのお子さまに増えているといわれるのが、注意欠陥・多動症(ADHD)です。
「落ち着かない、物忘れやうっかりミスが多い、その場にふさわしくないことを口にする」などが特徴です。
頻繁にまばたきをしたり、しきりに首を動かしたりするチック症、ストレスによって起こる脱毛症になるお子さまもいます。

高学年以降、増えてくるのは、起立性調節障害症(OD)です。
朝、なかなか起きられないことに加えて、立ちくらみやめまい、だるさ、失神、動悸、頭痛、夜眠れない、などさまざまな体調不良が起こるので、元気がなく、不登校になってしまう生徒もいます。
ODは自律神経の乱れが原因ですが、ストレスも悪化の引き金になると言われています。

・ 夜泣きのあるお子さまには、昔から心を落ち着かせる働きのある漢方薬がよく使われていました。甘いお茶ですと赤ちゃんも喜んで飲んでくれますのでお試しください。

・ ADHDのお子さまは、周りと自分が違うことに強い不安を感じていますので、心を安定させる働きのある漢方薬が合います。気持ちが楽になると症状が落ち着くのです。

・ チック症や脱毛症などにも精神安定作用のある漢方薬が効きます。

・ 起立性調整障害症の治療は、通常は西洋薬が使われますが、それでよくならない場合は漢方薬が効きます。

・ 漢方薬には、さまざまな薬がありますので、お子さまが一番悩んでいる症状に効くものを選びます。漢方薬と西洋薬を組み合わせると、短期間でよくなっていくこともあります。

株式会社ツムラ「子どもの心とからだ 漢方ですこやかに元気に」参照